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単身世帯数の急増に比例して増えている孤独死。残された家族が莫大な金額を請求されたケースもあるという。孤独死の現実を見てきたノンフィクションライター・菅野久美子氏が知られざる孤独死の「コスト」について語る。本稿は、菅野久美子『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

孤独死の後片付け費用で
大家と遺族が対立

 世間ではあまり知られていないが、孤独死すると問題になるのは、その清掃費用だ。通常、時間が経過すればするほど、物件へのダメージは甚大になる。

 近隣住民への被害の大きさも見逃せない。とある分譲マンションでは、体液が階下まで伝っていたため、下階の住民が数週間のホテル生活を余儀なくされたケースもある。

 また、隣人の家具や家財に死臭が付着し、引っ越しせざるを得なくなることもある。孤独死であっても、告知義務が必要な事故物件扱いとなり、よほどの好立地でない限り、資産価値が目減りする。

 何よりも、これらの高額な費用を巡って、大家と遺族が激しく対立するケースが後を絶たない。

 孤独死すると、一体どのくらいコストがかかるのか、その見積もりをみてみよう。

ケース1
特殊清掃会社A社の見積もり
女性・60代/間取り2DK/千葉県
・遺品整理 60万円
・特殊清掃その他(オゾン脱臭含む) 60万円
計120万円

事情:高度経済成長期に建てられたUR都市機構の物件での孤独死。死後1カ月が経過。階段なしの4階で、家財が多かったため、その処分費用と人件費がかさみ100万円超えになった。