隣の部屋は、収骨室に入りきらないほど大勢の遺族で溢れ、すすり泣きの声が聞こえる。

 家族に看取られた人も、孤独死をした人も、火葬は同じ場所で執り行われるからだ。

 骨を拾うのは、火葬場の男性職員だ。とても丁寧でありながら無駄のない動きで、夏場とあって大量の汗をかきながら、骨を一つずつはさみ、骨壷に納めていく。

書影『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)
菅野久美子 著

「よければ骨壷を持ってみますか?」

 あまりの手際の良さに見とれていると、葬儀社の女性職員にそう言われたので、骨壷を両手で持たせてもらった。

 それは意外にもずっしりと重く、まだ熱を持っていてじんわりと温かかった。両手で包むように抱えて、業者の車まで運んだ。共同墓地で合祀になるとのことだった。

 孤独死後、遺族が遺体の引き取りを拒否した場合や、身寄りがない場合は、最終的に行政が納骨や合祀の費用も負担する。早い話、これらの費用は我々の税金から支払われることになるというわけだ。