荼毘に付される手引きをするのは、行政から委託された葬儀社の職員だ。彼女によると一般の火葬では亡骸は霊柩車で運ばれてくるが、孤独死や身寄りのない人の遺体は、ワゴン車の荷台に乗せられてひっそりと運ばれてくるという。
幸いにもこの男性は、腐敗は進行していなかった。場合によっては、蛆や虫まみれのことも多く、チャック付きの袋で厳重に密封された状態で棺に入れられて、そのまま火葬となるケースも多いのだという。
つまり、棺を開けることすらできない状態というわけだ。
ワゴン車の荷台から棺が下ろされると、火葬場の職員が出迎える。ストレッチャーのようなものに乗せられて、一列に並んだ炉の前まで運ばれていく。
あっという間にストレッチャーは到着し、葬儀社の職員と火葬場の職員が一礼をして、火葬が終わるのを待つ。
しばらく経つと、葬儀社の職員に、収骨室へ呼び出された。かなりの高温に達した台の上に、焼ききって跡形もないほどに崩れた骨が人の形に整えられていた。