会社やチームのリーダーとして、いま、求められているリーダーシップとはなんでしょうか?
責任をとること? 部下やメンバーの話をよく聞いて、仲を深めることでしょうか?
『リーダーの言語化 「あいまいな思考」を「伝わる言葉」にする方法』の著者である木暮太一氏は、リーダーのすべきことは「言語化」であると言います。
本記事では、本書より一部を抜粋・編集し、なぜリーダーに言語化スキルが必要なのか、そして「あいまいな指示を明確にする問いかけ」についてご紹介します。
あいまいな指示を
明確にするための問いかけ
ぼくが多くの組織を実際に変えてきた問いかけを紹介します。この問いかけをするだけで、実際に指示が明確になっていきます。
まず、逆説的ですが、自分の指示が明確になっているかどうかを検証することはそもそも難易度が高すぎてできないという前提に立って考えます。さらには、自分の指示が明確になっていない前提で考えていきます。
あいまいな指示を明確にしていくためには、普段自分がしている指示のあとに、自分の中で『「そのために、何をする?」を3回繰り返す』を実施することが有効です。
「顧客に響く資料にして」はどう明確にする?
たとえば、「顧客に響く資料にしてください」「うま~く調整しておいて」という指示があります。ただこれらの指示はあいまいすぎて、何をどうしたらいいのかわかりません。本人は伝えたつもりかもしれませんが、受け手には意味不明です。
ここで、「そのために、何をする?」を3回自問します。
具体的にはこういうことです。
「顧客に響く資料にする」で終わらせず、自分の中で「そのために、何をする?」と問いかけるのです。
「顧客に響く資料にする。そのために、何をする?」と自問します。たとえば、「そのために、見込み顧客に課題をヒアリングする」と出てきたとしましょう。ぐっと明確になった感じがしませんか?
ただ、まだ終わりではありません。「見込み顧客に課題をヒアリングする」もまだまだあいまいです。ヒアリングといっても、英語のテストとは違って会議室で耳を澄ませておけば聞こえてくるわけではないのです。なので、また続けます。
「見込み顧客に課題をヒアリングする。そのために、何をする?」とさらに自問します。
課題をヒアリングするためには、先方に協力してもらわなければいけませんね。通常、まだ取引をしていない見込み顧客に電話をしても、自社の課題を簡単に話してはくれません。「もしもし、はじめまして。突然ですが、御社の課題を教えてください」と伝えても、何も教えてくれないのです。
そこで、ひとまず先方にアポを取って課題を伺う場をセッティングしようと考えました。そこでまた自問します。
「先方にアポを取って課題を伺う場をセッティングする。そのために、何をする?」と自問すると、自分がすべきことがよりクリアになっていきます。
ぼくもアポイントの電話をかけて営業をしていた時期がありましたので、簡単にはアポをもらえないことはよくよくわかっています。相手に電話して「アポをいただけませんか?」と言っても、基本的には断られます。イライラされたり、怒られたりすることもあります。
会ってもらうために、工夫が必要です。会ってもらうために……たとえば、
● 手土産を用意する
● 競合他社の成功事例をファックスする
● 競合他社の課題とそれを克服した手法をまとめた資料を作って持参する
などの方法が考えられます。筋がいいもの、悪いものがありますが、やるべきアクションのリストが明確に出てきました。ここまで明確になったら、指示を受けるメンバーが何をしたらいいか理解し、それを実行できます。
もともとの「顧客に響く資料にして」では、メンバーはなんとなくわかったつもりになるだけで、適切な行動はとれません。「そのために、何をする?」を自分の中で3回繰り返すことで、明確な行動に近づいていきます。