その途端、同期たちの態度が一変した。食事に誘われることもなくなり、会話の輪にも入れなくなった。一緒にリングを掃除することさえ拒否された。
仲間はずれにされた17歳の少女は、歯を食いしばって耐えるほかなかった。
押さえ込みルールの試合でも、千種は負け続けた。
勝敗が出世に直結するのだから、誰もが真剣に押さえ込みを研究する。ずっと後になってから気づいたことだが、当時の千種は押さえ込まれると右にしか逃げられなかった。ある時、同期のひとりがそのことに気づき、情報は瞬時に同期全員に行き渡った。動きを読まれた千種は、連日のように仰向けでスリーカウントを聞く羽目に陥った。
ライバル心を掻き立てるフロント
足首粉砕やアバラ骨折に耐える選手たち
全女が選手に求めるのは、女同士のリアルなケンカである。
リング上では激しいケンカを見せるものの、試合が終われば和気藹々。冗談ではない。女にそんな器用なことができるはずがない。リング上で激しい戦いを見せるためには、普段から険悪な人間関係を作っておく必要があるのだ。
そのように考える松永兄弟は、選手たちの精神状態をコントロールして、常に関係を悪化させる方向へと誘導していく。