天龍源一郎「なぜ猪木さんは懐刀を俺に抜いたか」、追悼・アントニオ猪木アントニオ猪木さんの喜寿を祝う左から天龍源一郎さん、アントニオ猪木さん、藤波辰爾さん、長州力さん Photo:Etsuo Hara/gettyimages

現役時代の80年代後半には天龍革命を起こし、一大ムーブメントを巻き起こした天龍源一郎さん。実際にリングの上で誰よりも多くのレスラーと戦ってきたからこそわかる、外からは見えない“本当の強さ”について、著書『俺が戦った 真に強かった男』(青春出版社)で語っています。今回は、その中から、かつて団体の垣根を越えて戦い、先頃お亡くなりになったアントニオ猪木さんについて、その強さの秘密を、頸椎の治療で現在入院中の病床からの追悼の言葉とともに、抜粋して紹介します。

アントニオ猪木が懐に忍ばせていた“刀”とは?

 プロレスラーは懐に刀を忍ばせている。

 腕っぷしの強さ、極めの技術、どんな状況でも動じない勝負度胸。戦いを生業とする人間ならば持っていなければならない刀と言っていい。

 燃える闘魂、アントニオ猪木。

 プロレスに人生を捧げ、プロレスを広めるために世間と闘い続けた、日本プロレス界の象徴たる猪木さんは間違いなく懐刀を持っていて、時にそれを振るうことを躊躇しない人だった。

 1993年5月3日、福岡ドームでの猪木&藤波辰爾vs天龍&長州力。そして1994年1月4日、東京ドームでの最初で最後の俺と猪木さんのシングルマッチ。猪木さんとは2度戦い、猪木イズム、ストロングスタイルと呼ばれる戦いをこの体で思いきり体感した。そして身をもって燃える闘魂の懐刀でバッサリと斬りつけられもした。