「極悪同盟vsクラッシュギャルズ」女子プロレスの“美学”に、世代を超えて人々がどうしようもなく惹かれるワケダンプ松本率いる極悪同盟の凶器攻撃を受ける長与千種 写真:アフロ

Netflixで配信されたばかりのドラマ『極悪女王』が話題となっている。1980〜90年代のプロレスブームからだいぶ時間がたった現代だが、この作品は若い世代からも関心を得ているようだ。その理由とは何か。かつて一世を風靡した女子プロレスの「美学」を振り返る。(フリーライター 鎌田和歌)

 お茶の間に集まって家族全員が同じテレビ番組を見ていた時代は今は遠く、それぞれが個別のデバイスで、YouTubeやTikTok動画や配信を見る世の中となった。全世代から支持される人気者が生まれづらく、さまざまなジャンル、カテゴリにスターとファンがいるのが現代だ。

 だからこそ、紅白歌合戦は全世代が楽しめる仕掛け作りに毎年工夫を凝らし、民放のテレビドラマはどこにターゲットを絞るかに苦慮するわけだが、Netflixで配信されて早々話題となっているドラマ『極悪女王』は、80年代の女子プロブームを覚えている年代(40代、50代以上)に目くばせしつつ、10代、20代の若い世代にも響く仕掛けがなされていると感じた。

リング上で歌い、踊る
女子プロレスブーム時の「アイドル」ぶり

 全日本女子プロレスが築いた女子プロブームは、1970年代後半からのビューティーペアによって決定的となった。

 ジャッキー佐藤とマキ上田は女性ファンを惹きつけ、瞬く間にアイドル的存在となり、歌番組に出てレコードを80万枚売り上げるまでになる。

 その人気に陰りが生まれ、全女が次のスターを探していたところに練習生のオーディションを受けて合格したのが、『極悪女王』の主人公であるダンプ松本(松本香)、そして同期のクラッシュギャルズ(長与千種、ライオネス飛鳥)だった。