「あなたの職場は、内部研修やOJTによる教育だけに頼っていませんか?」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で、働き方改革、組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」には共通する時代遅れな文化や慣習があり、それらを見直していくことで組織全体の体質を変える必要があると気づきました。
その方法をまとめたのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』です。社員、取引先、お客様、あらゆる人を遠ざける「時代遅れな文化」を変えるためにできる、抽象論ではない「具体策が満載」だと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「外部研修を受けられない職場」の問題点について指摘します。

人が辞めていく「知識や価値観が時代遅れな組織」が軽視している「学びの機会」・ワースト1内部研修やOJTだけに教育を頼っていないか?(イラスト:ナカオテッペイ)

外部研修の受講に消極的な組織

 いかなる組織においても外の風を入れることは、組織の文化を健全にアップデートし続けるために欠かせない。
 そのためには社外取締役の起用や、異動・出向・転職・複業・兼業などを通じて人材の流動性を高める取り組みはもちろん、日常的に外の知識や学びに触れることも重要である。

 そのために有効な手段の一つが外部研修の受講だ。
 
しかしそれに消極的な会社もある。その背景はさまざまだ。

 ・お金を節約したい
 ・外の世界を見て変な刺激を受けてほしくない
 ・外部研修を受けるヒマがあったら、手を動かしてほしい
 ・そもそも人材育成の必要性を感じていない

 一部の経営幹部や管理職しか外部研修を受けることができない、管理職であっても登用時にしか外部研修を受けられない企業もある。

知識、意識、価値観の格差が生まれる

 組織が研修に消極的では、学習や成長に意欲的な社員の士気は下がる。経営層や管理職と一般社員の間で知識や意識の差が広がり、会話がかみ合わない、改善や改革が進みにくくなるなど組織運営上の問題も生じる。

 また、管理職の知識や意識が登用時のままアップデートされないリスクもある。自助努力で知識や技術を身につける人でもない限り、考え方も技術もアップデートされない。悪気なく時代錯誤な考え方や体質が醸成され、メンバーを無力化し組織を停滞させてしまう。

組織のアップデートに外部研修は欠かせない

「わざわざ外部研修を実施しなくても、社内講師による研修やOJT(On the Job Training)で十分ではないか」

 そのような声を聞くこともある。
 しかし外部研修は、自組織の中にいるだけでは獲得しにくい新しい知識や技術、世の中のトレンドなどを知る上で大変有効である。外部の優秀な講師や専門家、同じ研修を受講する他社の人たちとグループワークなどで意見交換や関係構築できるメリットも大きい。いずれも社内の講師が実施する内部研修では得られないものである。

 ビジネスマナー、コミュニケーション、チームビルディング、マネジメント、思考法など、汎用スキルの習得においても内部研修やOJTでは限界がある。社内の人が教える内容は自社の常識や個性が強く、独自路線に走りがちだからだ。社外で通用しにくく、他社との協業や共創の妨げになることさえある。汎用スキルこそ社外の専門家に教わる方がよい。