アルムナイ・リレーションシップが根付いていくために

 また、幅広く、企業、社員、アルムナイの全てに向けた内容にしてしまうと、誰にとっても有益でない情報になる恐れがあるため、本書はアルムナイとの関係構築に取り組まれていたり、検討されている企業の方を主な対象とした内容となっています。もちろん、アルムナイにとっての価値や、企業側の考えを知ってもらうという意味で、アルムナイの方にとっても読む価値が十分にある内容になっていると自信を持っていますが、あくまでも、メインの対象はアルムナイとのつながりを考える企業側の方を想定しています。これは、私たちが「アルムナイ・リレーションシップは企業だけが得をするもの」などと考えているからではなく、本書のフォーカスを明確にするためです。最近では「アルムナイ・リレーションシップは企業ではなく、個人のためのものである」といった論調もありますが、私たちはそれに対しても反対のスタンスをとっています。アルムナイ・リレーションシップは企業だけのものでも個人だけのものでもなく、双方にとっての重要な社会関係資本となることで長期的に持続可能なものだと考えています。

 日本社会におけるアルムナイ・リレーションシップは、まだまだピークを迎えているわけでもなければ、“正解”が出ているわけでもありません。これから、日本に文化、そして社会のインフラとしてアルムナイ・リレーションシップが根付いていくには、自社やユーザーだけではなく、より多くの外部パートナーや、異なる思想を持つ他社などとも意見をぶつけながら、日本におけるアルムナイ・リレーションシップを進化させていくことが必要です。本連載や本書が、同じ考えや想いを持って共感していただいた方はもちろん、共感するところもあるが反対意見があるという方や、全面的に反対で意見をしたいという方など、さまざまな方から私たちにご連絡をいただくきっかけになれば嬉しいと考えています。実際、そのようにご連絡をいただいた方と一緒にセミナーをやらせていただいたり、一見、競合とも見られるような企業と協業させていただいたりもします。アルムナイとの関係構築に取り組む企業や退職に悩む企業の方、退職した企業との関係に想いや意見があるアルムナイの方、「アルムナイ ×○○」というサービス構築のアイデアがある方など、さまざまな方に本書を手に取っていただき、私にご連絡をいただければとても嬉しく思います。