毎朝必ず空を見上げて微笑む

 彼の細かいルーティンには、「毎朝必ず空を見上げて微笑む」というものが含まれていました。それは曇りの朝でも雨の朝でも決して変わることはありません。

新しい一日を自分は生きているのではなく、生かされている。

 この気持ちが心の中になければ、朝からどんよりした曇り空を見上げて微笑むことはなかなか難しいでしょう。おそらく彼の心の中に、新しい一日を生かされることへの感謝の気持ちがあったことは間違いありません。

 彼は代々木八幡宮の境内でいつも昼ご飯を食べ、その際、空から射す木漏れ日の様子を毎日同じ場所で写真に収めます。焼き付けた木漏れ日の写真を並べたところ、一枚たりとも同じ木漏れ日の日は存在しません。彼は毎日撮影した木漏れ日の写真を日付ごとに整理し、大切に保管していました。

今度は
今度
今は

 毎日の木漏れ日に同じものが一つとしてないように、この世界に同じ一瞬は存在しません。「今度」の一瞬と「今」の一瞬は全く異なります。普段無口な彼がこの言葉を通して、「今」の一瞬の重要性を、訪れてきためいに対してきっと伝えたかったのでしょう。

 大人の生活は、毎日毎日、会社や家庭で同じことの繰り返し。それをつまらない、退屈だと思って生きている人は大勢いるかもしれません。たとえ同じようなことを毎日やっていても、毎日すべてが同じということは絶対にありません。毎日が同じだと思えるのなら、それは自分の心の持ち方に原因があります。

「日日是好日」。目の前の世界や自身の行為(ルーティン)は、おのれの心の持ち方で全く変わって見えてきます。心の中に「今」の一瞬を大切にして、それを楽しむ感性があれば、世の中に同じ日など存在しなくなり、きっと目の前の世界が尊く、美しく見えてくるのではないでしょうか。