左:ここより賞受賞作品(潮泉寺)、右:仏教伝道協会本賞(超覚寺)左:ここより賞受賞作品(潮泉寺)、右:仏教伝道協会本賞(超覚寺)

本日は全国的にクリスマス、2023年も残すところ1週間を切りました。観測史上最も暑かった1年、新型コロナ禍が落ち着いても、体調を崩す人が多かったのでは。疲れたら休む。孤独な時にも仏さまのご縁がある。体に気を付けて良いお年をお迎えください。(解説/僧侶 江田智昭)

“頑張る”は美辞ではありません

潮泉寺の掲示板潮泉寺(東京) 投稿者:la source de vie@1947_2016 [2023年9月29日] 

 仏教関連のさまざまな情報を発信しているサイト「ここより」。「ここより賞」受賞作品は、浄土宗の潮泉寺(東京・文京区)の掲示板「疲れたら一休み。休んだらまた一歩」です。この作品の講評は以下のとおり。

 この数年、私たちは感染症の危険に晒されながら生活をしてきました。「一休み」も大事なことですが、「また一歩」という言葉から、疲れやストレスの中でも動かなければならない人へのエールを感じ、選出しました。

 2023年に入ってから、社会がようやくコロナ前の状態に戻ったように思えます。この間、3年のブランクがあるため、現在の慌ただしい状況に疲れてしまった方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか?

 2~3年前には「不要不急」と呼ばれ捨て置かれた用事も、いまはすべてこなさなければなりません。やらないといけないことが急激に増加し、その状況に頑張りすぎて体調を崩す人も大勢いるようです。

 昔、宗教思想家のひろさちや氏が、「“頑張る”という言葉は美辞ではなく、以前は軽蔑の意味を込めて使われていた」とおっしゃっていました。同時に、「“頑張る”という言葉が市民権を得たのは、1936年ベルリンオリンピック大会の水泳実況で連呼された『前畑頑張れ!』あたりからである」とも指摘されていました。

 当然のことながら、どんな人間もずっと頑張り続けることはできません。現在の日本社会では、“頑張る”ことが完全な美徳になっていますが、そのような価値観をまともに信じこんでいたら、必ずどこかのタイミングで自身が不幸になってしまいます。

“頑張る”ことが必ずしも正義ではありません。疲れたときは一休みして、またほどほどに取り組めばよいのです。