左:笑い飯哲夫賞受賞作品(超覚寺)、右:お寺の窓口賞受賞作品(円成寺)左:笑い飯哲夫賞受賞作品(超覚寺)、右:お寺の窓口賞受賞作品(円成寺)

急激な円安もあって、「物皆上がる令和5年」はスタグフレーションを感じさせる年でした。都内の火葬場、一週間待ちは当たり前、要する費用も年々アップ。死んでからもタダでは済まされないご時世ですが、先人の辿った道を知り、自分の“個性”と向き合いましょう。(解説/僧侶 江田智昭)

「みちなり」を行き“個性”の呪縛から逃れる

超覚寺(広島) 投稿者:chokakuji [2023年7月23日]超覚寺(広島) 投稿者:chokakuji [2023年7月23日]

 7週にわたってお届けしてきた「輝け!お寺の掲示板大賞2023」受賞作品のご紹介、最後の2作品となります。まずは、お笑い芸人の笑い飯哲夫さん提供「笑い飯哲夫賞」の受賞作品「人生みちなりでいいのよ」。今年は3作品も受賞した超覚寺(広島市中区)ですが、笑い飯哲夫さんご本人による講評は以下のとおりです。

 人と違うことをしたい、と思いがちですが、実は人と同じことをする方が難しいんです。先人たちが歩いてきた「みち」はめちゃくちゃ複雑だけど照らされてもいて、だからそこを歩ける。最高のカンペが「みちなり」なんだと思ってます。

 現在は、子どもの頃からそれぞれの個性が強く求められる時代になりました。ナンバーワンよりオンリーワン。槇原敬之作詞作曲「世界に一つだけの花」は、SMAPが歌い、いまも歌い継がれています。一番にならなくてもいいんだよというこの歌詞に共感する人も多くいますが、一方で、他人と違う特別なオンリーワンを探さないといけないという考え(強迫観念)に縛られ、苦しんでいる人もいるようです。

 当然のことながら、すべての人が特別の“個性”を持っているわけではなく、その“個性”を社会で発揮できるわけでもありません。たいていのことは、すでに先人がやり尽くしていますから、いたずらに自分のオリジナリティを追求するのではなく、先人が残した“みち”をしっかり辿り、学ぶことも非常に大切です。

 哲夫さんが指摘されているとおり、先人と同じことを行うこと自体、実は非常に大変です。それを実践すること自体が立派な個性なのだと私は思います。このことを心に留めておけば、無駄な強迫観念から解放され、少しは生きやすくなるのではないでしょうか。