光蓮寺ビハーラハウス(岩手) 投稿者:@akilayoshida [2024年7月10日] 光蓮寺ビハーラハウス(岩手) 投稿者:@akilayoshida [2024年7月10日] 

今年も「お寺の掲示板大賞」の秋がやってきました。涼しい朝晩には散歩をして、お寺の掲示板の言葉を読みながら、毎日を新鮮な気持ちでお過ごしください。(解説/僧侶 江田智昭)

一つ一つの所作を大切に

 仏教伝道協会主催「輝け!お寺の掲示板大賞」も、2024年で7回目を迎えました。今年も7月1日から応募を受け付け、9月30日に締め切りました。今回の応募作品数は3755点。過去最高だった前回の4107点には及びませんでしたが、奇をてらわないまじめな作品が増えている印象を受けました。たくさんのご応募、誠にありがとうございます。恒例の大賞発表は12月5日ですので、今年も幾つかの応募作品をそれまでご紹介して参ります。

 今回の掲示板に書かれた言葉、これは今春の米アカデミー賞作品賞にノミネートされた映画『PERFECT DAYS』で主演を務める役所広司さんのセリフです。役所さんは、独身で無口なトイレ清掃員の役を演じています。

 朝まだ暗い内に起きて、道具を積み込んだ自動車で隅田川を渡り、渋谷区にあるトイレを清掃し、帰ってきたら墨田区の銭湯に入る。そして、行きつけの浅草の店でサワーを飲み、文庫本を読んで寝る。彼が毎日こなしているルーティンの中に特に大きな刺激はありません。

 作品を実際にご覧になった方は分かると思いますが、彼はそうしたルーティンワークの一つ一つの中に喜びを見出していました。この作品のキャッチフレーズは「こんなふうに生きていけたなら」。日常のささいな行為を大切にして、それを楽しむことができたら、そんな人生は幸せだと感じられる作品でした。

 この作品の監督を務めたのは世界的巨匠のヴィム・ヴェンダースさん。彼は以前、インタビューの中で、主演の役所広司さんのキャラクターは、カリフォルニアに住む友人の禅僧をイメージして作ったと答えていました。

 確かに禅寺の僧侶は、毎日ほぼ同じ行動を繰り返し、その過程にある一つ一つの所作を大切にします。そして、特に掃除という行為を重要視します。ですから、この作品はある意味、仏教(禅)的な映画ともいえるかもしれません。