後に美空ひばりが20歳で出版した自伝『虹の唄』(初出は1957年7月、読売新聞に連載されたもので、執筆したのはひばり本人ではなく代筆)に、楽屋で2人が並んで座っているこのときの貴重な写真が載っている。笠置は両手でひばりの肩を抱き、ひばりの左手は笠置のひざの上に置かれている。この2人の表情がとてもいい。
けっして作り笑顔とは思えないほど、打ち解けているのがよくわかる。“いい写真”という言葉がぴったりだ。また、よく見ていると不思議なことがわかった。錯覚かもしれないが、2人は親子ではないかと思うほどよく似ているのである。
交錯した2人のスターの人生
資料から消えた幻のスナップ写真
『虹の唄』にはこう書かれている。
「ある日、笠置シヅ子先生がおでになることになりました。私が一番尊敬している先生です。うれしさに胸が一ぱい。笠置先生はいろいろ親切に面倒を見て下さいましたし、私のような子どもと一緒に写真も撮って下さいました」
たしかにこのとき、2人にとって楽しく微笑ましい出会いだったと考えられる。“ブギの女王”としてスターの座に着いたばかりの34歳の笠置と、まだ11歳であどけなさも残る天才少女の計り知れない可能性を秘めたひばりの人生がここで交錯し、まぶしいほどに輝いた一瞬である。