電力崩壊 業界新秩序#2写真提供:JERA

東京電力グループと中部電力の火力発電・調達部門の合弁会社JERA(ジェラ)が存在感を増している。2015年の設立以来、各経営指標はうなぎ上りで“生みの親”と比肩するようになった。特集『電力崩壊 業界新秩序』(全9回)の#2では、電力危機にあってますますJERAの存在感が際立っている理由を探る。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

冬の電力危機回避のための供給力公募で
JERAが大半を落札した

 西日本で100%、東日本で約75%――。

 この冬の電力危機を乗り越えるべく、政府は電力会社に対し、古い火力発電所の再稼働を呼び掛けた。実際の運用としては、全国の一般送配電事業者8社が供給力(キロワット)の公募をかけた。これを落札しまくって“電力危機の救世主”となったのはJERA(ジェラ)だった。

 冒頭のパーセントはダイヤモンド編集部が推計したもので、西日本で実施された公募の全て、つまり100%を落札したとみられる(DR〈電気の需供バランスを取るために需要家側の電力を制御すること〉分を除く)。東日本ではJERAが姉崎火力発電所5号機(出力60万キロワット)分の供給力を落札し、DR分を除く落札量比で約75%を占めた。

 JERAという社名は一般の電気消費者には耳慣れないかもしれないが、東京電力ホールディングス(HD)の100%子会社である東京電力フュエル&パワーと中部電力の合弁会社である。東電グループと中部電の火力発電事業が統合し、液化天然ガス(LNG)の調達・トレーディングなども行う。

 JERAの発電容量(能力)は日本最大で、実際の発電電力量は国内の約3分の1を占める。業績面では2015年の設立から急成長を遂げ、主要な経営指標は、「中3社」と呼ばれる大手電力トップスリーの東電HD、関西電力、中部電と比肩するようになった。社員の給料しかりだ(次ページの詳細グラフ参照)。

 燃料調達コストが上がっている状況下、ある電力業界関係者は冒頭の落札劇に「結局、今の日本で『しわ取り(全体の発電量を安定させるための調整)』ができるのはJERAしかないんだよ」と語る。一般の知名度が低いJERAが、業界の「裏ボス」的な存在感を増しているのである。

 では、なぜJERAは急成長できたのか。そして電力危機の中、裏ボス感が増す「もう一つの理由」とは?