2000年には化石燃料が世界の一次エネルギーの87%を占めていたが、2020年には83%となり、年率0.2%の削減となった。しかし、2050年までに脱炭素社会を実現せよというお達しがでたのだから、30年後に83%からゼロにするには、世界で年率2.75%のペースで化石燃料による炭素排出量を削減しなければならず、これは、21世紀の最初の20年間で達成したスピードの約14倍に相当する。ここまで大幅な炭素排出量の削減をいますぐ実現し、今後30年にわたって持続させるための技術力と資金力が、いったいどこにあるというのだろう?

 言うまでもないが、こうした目標は達成されないだろう(世界経済の前例のない崩壊がこれを実現する唯一のチャンスかもしれない)。完全な脱炭素化という目標に向けた進展は、再生可能エネルギーへの転換を進めている一部の国(ノルウェー、アイスランド、デンマーク、フィンランド)では世界平均よりスピードが速いだろうが、もっと面積が広く、人口も多い低所得の国(インド、パキスタン、インドネシア、ナイジェリア)ではスピードがはるかに遅くなるだろう。