グリーン水素への転換コストは?
風力発電プラントを作るエネルギーは?

 では、コストについてはどうだろうか?いまはまだ長い移行期が始まったばかりで(2020年のエネルギー需要のうち、非化石エネルギー源のものは総需要の7%未満)、なかにはすでにだいぶ安くなったエネルギーもあり、ある程度は頼りにできるものの、現段階ではまったく新しいインフラ(数十億トンの原油と天然ガスに代わるグリーン水素の製造・輸送・貯蔵など)を世界規模で開発するコストの見積りなど不可能だろう。

 脱炭素化をめざす努力を続けても、同時に進行するほかの開発によって、また脱炭素へと転換を進めるそのプロセスにおいて、効果が一部相殺される場合もある。その最たる例が風力発電だ。

 巨大な風力タービンの建設には、基礎となる鉄筋コンクリート(セメントと鋼鉄)、タワーやナセル〔訳注:増速機や発電機を入れる容器〕用の鋼鉄、巨大ブレード用のプラスチック、モーターをスムーズに動かすための潤滑油などが大量に必要であるうえ、タービンを大型トラック、船、タグボートで陸上や洋上に運ばなければならず、洋上ではヘリコプターを利用する場合も多い。これらの部品や輸送手段はすべて、化石燃料に大きく依存している。燃料(鋼鉄・セメント・プラスチックの製造から自動車や船舶の動力源として)、原料(プラスチック製造)、潤滑油など、すべてが化石燃料を必要とするのだ。