ところが、その下品だった男が大統領に選ばれてしまった。
このニュースを聞いてブレントが考えたのは父親のことだった。彼の父親は正しいことをしてきた男だった。セールスマンだった。最初はコピー機を売った。それから保険。採掘装置。そして巧みなセールスパーソンになるためのコツを教える会社を設立した。結婚し、離婚せず、3人の子の父親になった。最初の子がブレントだった。
正しい行いのまま死んだ父
真逆の男が長生きし大統領に
父親はどういうわけかブレントを「ホットロッド」(スピードが出るようにエンジンなどを改造した車のこと)と呼んだ。その呼び名をブレントはとても気に入っていた。
父親は鍵の束を振り回してはじゃらじゃら鳴らした。大人になっても、その音はブレントの耳に残っていた。
一家のルーツはミシシッピ州で、ブレントが8歳のときに北へ移ったが、夏になるたびにミシシッピに戻った。そこに祖父母の農場があり、ブレントはダートバイクに乗ったり池で水切りをしたり仔牛を追いかけたりペットボトルで花火を飛ばしたりして遊んだ。