「わかった。諒解だ。しっかりやれ。次の連絡を待つ」と上官は言い、受話器を置いた。「何と言ってます?」とブレントは尋ねた。

「ふたり戦死した」と上官が言った。両目に涙が溢れていた。

 ブレントの目も潤んでいた。それから間もなく、モニターに映されたのは、建物の陰から飛び出してきたひとりのイラク人が、隊列に向かって銃を連射している姿だった。リモートカメラに映されていることは知りようもなかった。そのときブレントは「死ね、モンキー(クソ野郎)、死ね」と叫んだ。

イラクからアメリカに帰国
敵はもはやイラク人ではなかった

 部屋にいる全員がカメラを見た。

「死ね、クソ野郎、死ね」とブレントはもう1度叫んだ。そしてほかの兵士たちも一斉に怒鳴りだした。アイアティはすでに燃え上がる兵士の夢を見ていた。プレストリーは間もなくカンザスにいる妻とふたりの娘のもとに帰ることになっていた。その部屋には12人ほどがいたが、全員がブレントの声に合わせて叫んだ。そしてブレントはふと、自分の声に戸惑って口をつぐんだ。