イラクで敵の総攻撃の最中
トランプがやっていたこと
「最悪の悪夢が現実のものになっている」とブレントはこの日、2008年3月26日に言った。いたるところから聞こえてくる銃声で無線装置からの声を聞き取るのが難しかった。
3月27日。迫撃砲とロケット弾。ロケット推進式の手榴弾。あらゆる攻撃にさらされた。
そして3月28日。兵士たちがなんとか眠りに就こうとするなか、アメリカではドナルド・トランプが「セレブリティ・アプレンティス」(編集部注/ドナルド・トランプをホストに、ニューヨークのトランプ・ワールド・タワーを舞台に、出された課題に参加者がチームで取り組んでいく、リアリティショー)という番組で、新たな優勝者を発表していた。
「あんたは意地の悪い男だね」とトランプは、優勝者と1200万人の視聴者に向かって、彼流の祝いの言葉を述べた。
3月29日。かすかに聞こえるあれは爆発音なのか。
もう1発、2発と続いた。そして無線の向こうから悲鳴が聞こえた。車が1台破壊された。兵士は撤退すべきだ。数分が経った。無線は無数の銃声で満たされた。さらに数分が経った。電話が鳴り響き、ブレントの上官が受話器を受け取った。