それに、当時の私には重い病気を患っている夫と、大学に通う息子がいて、そのふたりを44歳のなんのスキルもない私が養っていくには、就職していただくお給料だけでは厳しいと思いました。それもあって起業したんです。

心がけたのは「心を尽くす」こと
顧客のことを考えた店作りと接客

堀江 で、やり始めた居酒屋が人気店になった。

藤崎 はい。心がけたのは、すべてに心を尽くすということでしょうか。メニューも接客も設えも……。家庭料理が得意だったので家庭料理のお店を開業したのですが、卵焼きや煮込みハンバーグなど、より一層美味しくなるよう研究してレシピ化しました。赤ウィンナーの切込みの数まで決めていました。

 接客に関しては、お1人お1人お店にいらっしゃる理由は異なるので、そのことを察知して接客していました。また、設えについては、店内がすべて見えてしまうユニークなファサード、ビールグラスは焼き物、アイスペールと水差しは竹製、コースターは布製、箸置きに取り皿などなど、新橋の居酒屋ではありながら、和んでいただける空間になるよう、心を込めて準備しました。それらの総合力で繁盛店になったと考えています。