「グランクラスはどうなるの?」。新幹線の「貨物車両」導入検討の一報は、鉄道ファンのみならず一般ユーザーもザワつかせた。高級シートと専任アテンダントによる飲食サービスで「新幹線のファーストクラス」とも称されるグランクラスが、場合によっては消滅してしまうのか? 登場の歩みを振り返りながら、最近は「改悪ばかり」と評されるそのサービス内容を検証してみよう。来春には値上げも予定する中、将来の姿はどうなるのか。(乗り物ライター 宮武和多哉)
新幹線の先頭車両が貨物専用になるなら…
最上級「グランクラス」はどうなるの?
日本初の新幹線である東海道新幹線の東京駅~新大阪駅間が、10月1日で開業60周年を迎えた。同日、一部メディアは、新幹線の「貨物専用車両」の開発をJR東日本が検討していると報じた。東北・上越・北陸新幹線の先頭車両が、貨物スペースに活用される可能性があるという。これまで旅客輸送に徹してきた新幹線が、貨物専用車両を導入するとなると、新幹線の歴史の一大転換点である。
ただ、実現しても運ぶのは大容量のコンテナ貨物ではなく、小荷物輸送程度のサイズにとどまりそうだ。それでも、調達業務に携わるビジネスパーソンや、物流・サプライチェーンの構築に頭を悩ませる関係者など、現状では航空一択の少量・高速輸送の手段として、「新幹線の貨物輸送」が気になる人も多いだろう。
一方、鉄道ファンや一般ユーザーからは、「グランクラスはどうなるの?」という、別の声も聞かれた。「新幹線のファーストクラス」とも称され、高級感のあるシートにアテンダントによる飲食サービスが付くグランクラスは、現状、東北・上越・北陸新幹線(E5系、E7系車両など)の先頭車両に設定されている。もし今後、貨物車両が新幹線の先頭を奪えば、グランクラスは居場所を失う可能性もあるのだ。
新幹線の貨物車両導入は、グランクラスに影響を与えるのか。場合によっては消滅してしまうのか。まずはグランクラスの歩みを振り返りながら、そのサービスを検証してみよう。そして、なぜ最近はグランクラスが「改悪ばかり」と評されているのか、さらに近い将来の姿はどうなるのか、掘り下げていこう。