東北新幹線 E5系 車内 グランクラス東北新幹線 E5系 車内 グランクラス Photo:PIXTA

新幹線の高級サービス「グランクラス」
ANAとJALに対する“切り札”として登場

 新幹線のグランクラスは、2011年3月にサービスを開始した。構想当初は「スーパーグリーン車」とも呼ばれていが、サービス開始後は飛行機の最上位座席になぞらえて「新幹線のファーストクラス」と称されるようになった。

 1編成で1000人近く乗車できる新幹線において、グランクラスの設定はたったの18席しかなく、その空間は贅沢そのもの。シートピッチ(前後の間隔)は1.3mと普通車より30㎝近くも広く、座席有効幅は52cm、横3列並び(普通車は5列)で広々としている。飛行機のファーストクラスが、シートピッチ約134cm、シート幅約51cm(JALのA350の場合)なので、ほぼ同等といえる。

 座席は、手元のコントロールパネル操作で背もたれ、座面、フットレストが連動し、最大45度まで倒せる。飛行機のようなモニターや映像サービスはないが、座り心地やシートの質感でいえば、グランクラスの座席はかなり良い。

 そしてグランクラスには、洋食・和食から選べる軽食が付いており、ワインや日本酒、ビールなどのアルコール類も含めたドリンクが飲み放題のサービスもある(A便のみ)。また、ANAやJALのファースト・ビジネスクラス搭乗時に使えるラウンジと似たサービスとして、グランクラス利用者が使える「ビューゴールドラウンジ」が東京駅に設置されている。

 乗り物の上級サービスとしては後発である分、グランクラスは「対・航空」を強く意識したものだったといえるだろう。その料金は、例えば16年3月に北海道新幹線が開業した当時、東京駅~新函館北斗駅間で普通車指定席は2万2690円、グリーン車が3万0060円のところ、グランクラスは3万8280円だった。普通車指定席に比べて1万5000円以上も高い。

 グランクラスはサービス開始後、数年間は、「高い料金でも見合ったサービスだった」と評価するユーザーは多い。例えば、15年に北陸新幹線の金沢駅が延伸開業した時には、グランクラスのチケットが一時、争奪戦となったほどだ。金沢開業後の18日間で、全体の乗車率が「かがやき」63%、「はくたか」71%だったのに対して、グランクラスの乗車率は77%にも上ったという。

 しかし、コロナ禍による乗客の大幅減少を経て、近年のグランクラスはサービスを削った一方で値上げしたため、ブランドの効力が低下しつつある。冒頭の話に戻ると、グランクラスの人気が低迷している現状があるからこそ、「新幹線の先頭車両が貨物専用になるかもしれない」とのニュースを見聞きして、グランクラスの先行きを思い浮かべた人々が多かったのだろう。