新日本酒紀行「MINAKI」皆木研二さん Photo by Yohko Yamamoto

特別な時間に寄り添う日本酒を!高級ブランドで市場を開拓

 半導体業界におけるファブレスとは、生産設備を持たず、自社で企画設計した製品を委託製造すること。これを日本酒業界に持ち込んだのがREBORN代表の皆木研二さんだ。自らの名を付けた酒「MINAKI」を1本3万円以上の高価格で直売し、日本酒の意義を問う。

 皆木さんは2015年に動画制作会社プルークスを起業し、18年にM&Aで譲渡。その後、1年をかけて国内外を巡り感じたのは、高級ワインは数あれど、日本酒はなく、価値に対して安過ぎるという課題だ。第二の創業を日本酒で目指すが、新規の清酒製造の免許は下りないため、M&Aで酒蔵を買うか、濁酒製造しか道はない。皆木さんが選んだのは第三の道ファブレスだ。

 酒米の品種や精米歩合を決め、果実味と洗練された甘味、淡い酸味のある酒質を設計し、醸造元に選んだのは奥羽自慢。杜氏の阿部龍弥さんと、仕上がりの味をとことん擦り合わせたが、皆木さんの頭の中にしかない酒だ。阿部さんが同じ酒質を想像し、造れるかは未知数。「胃がキリキリ痛み続けました」(皆木さん)。