ニトリPhoto:PIXTA

家具のニトリと、衣類品のファーストリテイリング。同じ小売業でありながら、ニトリは減収減益、ファストリは増収増益となっており、大きな差が生まれている。その要因とは何か? 決算書をみると、販売戦略に決定的な違いがあることが浮き彫りになる。佐伯良隆『100分でわかる! 決算書「分析」超入門 2025』(朝日新聞出版)より一部抜粋・編集してお届けします。

世界一の連続記録が
ついにストップ……

 2023年3月期決算で36期連続の増収増益を達成し、世界最大の小売企業である米・ウォルマートを抜いて、連続記録が世界トップとなったニトリホールディングス。ところが当期(24年3月期)は、一転して減収減益に。ニトリの快進撃に歯止めをかけたものとは何でしょうか。

 はじめに損益計算書をみていきます。事前に注意したいのは、前期から、決算月が2月から3月に変更されている点です。これに伴い、前期の業績は13カ月分(ひと月分多い)数値になっているため、増減を単純比較することはできません。従って、過去3~5年の業績をみて時系列分析をしていきます。

 まず、当期の売上は8958億円で、2期前の22年2月期と比べると842億円(10.4%)増。前期の業績を機械的に1年分に計算し直すと8752億円になりますが、それと比べても206億円(2.4%)増と、運動量は増え続けています。ただし、20年→21年、21年→22年の増加率と比べると、成長速度は緩やかになっています。

 一方、当期の営業利益は1277億円で、こちらは2期前と比べて105億円(7.6%)減少。営業利益率は、21年2月期をピークに4.9ポイント下がっており、収益性が年々低下している傾向が読み取れます。

 原因を探るため、費用の項目をみてみましょう。まず、原価率が21年2月期から3年で6.5ポイント上昇。これは原材料費や輸送費の高騰による影響です。販管費率は21年2月期から1.6ポイント低下するも、低下幅が原価率の上昇分に追いついていません。ムダな動きの割合(原価率)が増えたことで、運動効率(営業利益率)が落ちたことがわかります。