茂木 以前、将棋AIの開発者が言っていた話がおもしろくて好きなんです。一時期、電王戦といって、人間の棋士とAIとの対戦が注目を浴びていた時代がありましたね。その時代が終わって、今はAIが人間のはるか上をいっていることが確定しちゃったわけですが、AI同士の対戦って、じつはまだやっているんです。

加藤 そうなんですか。

茂木 はい。でも、そこには誰も興味を持ってなくて、それはチェスも同じなんだそうです。結局、人間は人間同士の対戦にしか興味がないというか、生身の人間の持っている人間臭さや息遣いに人は魅力を感じるんだなと。加藤さんの時代も藤井さんの時代も問われるのは人間力なんだなと思いますね。

 加藤さんの場合、信仰というものがあるだろうし(編集部注/加藤氏は30歳のときにカトリックの洗礼を受けた)、羽生さんは勝利を確信すると指が震えるということが知られています。そういうすごいパッションのあるところが羽生さんの強みなんでしょうし。逆に藤井聡太さんは、淡々とクールに攻めていくところが人間力でしょうし。人によって、人間力が違うのもまた魅力ですよね。

 まあ、今後はAIにもはっきりとした個性が出てくるかもしれない。そうしたら、AIにも今までとは違う魅力が出てくるのかもしれないですけれどね。