藤井聡太がデビュー戦から
見せていた本質とは?
加藤 僕は、藤井聡太さんのデビュー局で対戦し、千駄ヶ谷の将棋会館には多くの報道陣が集まって非常に話題になりました。僕は矢倉で名人にもなり、タイトルも取り、たくさん勝っていて、矢倉がいちばん得意なんだけれども、矢倉の中で5局ぐらい手を焼いている形があるんですよ。その中のひとつの作戦を、このとき藤井さんが僕にぶつけてきた。僕はその瞬間、彼はすごい勉強家だと思った。
茂木 加藤さんの将棋を研究していたんですね。
加藤 そう。僕の苦手な将棋をぶつけてきた。対局の始まる30分以上前に着座して、微動だにしない。僕は矢倉で約800局戦って400局以上勝っていますが、藤井さんはすべて研究している。彼は秀才型だと悟りました。あの人の本質は、既に僕とのデビュー戦で出ていました。
茂木 なるほど。
加藤 それであらためて思いますが、人生には巡り合わせというものがあって、私は藤井さんと対局してから、6ヵ月後に引退したんです。これはよかったんですね。なぜかと言いますと、藤井さんが僕にデビュー戦で勝って、その後、どんどん、どんどん、彼は勝っていきました。そこで今まで将棋のことがまったくわからなかった世界の方々も将棋界に注目し、将棋界は沸きました。