人事異動には“パラレルキャリア”的な効果がある

 私の定義では、「パラレルキャリアは、本業を持ちながら、別の組織で仕事や活動を行うこと」であり、金銭目的というよりは、自己の成長や精神的な豊かさを目的とします。

 そして、目先の収入以外の、様々な効果を持ちます。たとえば、普段は会わない人と接することによる新たな視点の獲得、新たな人脈の形成、第三の居場所(サードプレイス)がもたらすメンタルバランスの安定、メインとパラレルの相乗効果などです。加えて、もう一つの大切な効果として、スキルの向上・複線化による「将来のリスク軽減や、チャンスの拡大」があげられます。

 人事異動での仕事は、社外で別の仕事や活動をするわけではないので、パラレルキャリアとは異なります。しかし、ここで注目すべきは、社内での異動の場合も、新たな視点の獲得や新たなスキルの獲得といった、パラレルキャリアと同様の効果を有する点です。

 これまで取り組んできた仕事とまったく関わりがないとしても、それまで身につけたスキル自体がなくなるわけではなく、新たなスキルがプラスアルファされるはずです。

 縁あって入社した企業を離職しなくても、人事異動によって、社内で新たなスキルの獲得や新たな人脈の形成が可能なのです。異動での仕事は、社内での「疑似パラレルキャリア」経験といってよいかもしれません。段階的に、人事異動での仕事経験を積んだうえで、次のステップとして社外での武者修行とも言えるパラレルキャリアを実践すると、より効果的です。

 20代で1度以上のジョブローテーションを経験し、30代で武者修行として、社外でのパラレルキャリアにチャレンジすることを、私はお勧めします。社内で学べることはいっぱいあるので、まずは、社内でできる限り吸収することです。仮にローテーションがない組織に勤務している場合であっても、他の部門や他職種の仕事内容に貪欲に関心を持って自ら学んだり、意欲ある有志を募ってネットワークを形成するといった工夫で、多くのことを吸収できます。