この近位尾椎と遠位尾椎の境目には、両方の特徴を併せ持つ椎骨が存在しており、そうした椎骨のことを移行椎と呼ぶこともある。あくまで個人的な経験談でしかないが、テールスープの中に入っている骨は、近位尾椎または移行椎のことが多い。

もうひとりの立役者・筋肉
人間にもその名残がある?

 続いて、骨と同じく大事な要素である、しっぽの筋肉についても整理してみよう。

 生き物の多様な動きを可能にする立役者が筋肉である。骨だけの状態では動き回ることができない。せっかくなので筋肉の大切さを伝えるために少々脱線するとしよう。

 あれは私がまだ幼かった頃、子どもたちの間でまことしやかに囁かれていた噂があった。私が最初にそれを耳にしたのは、小学校の理科準備室に入ったときだ。近くにいる先生に聞こえないように、同級生がひそひそと耳打ちしてきたのだった。

「なあなあ、知ってる?あれ、夜になったら学校の中、歩き回るんやって」

 そう言って彼女が指さした机の上、そこに置かれていたのは古ぼけた人体模型だった。木か何かでできていたように思う。頭髪はびちりと七三分けの男性で、開胸・開腹した状態を模しており、腹腔の臓器が顕になっているタイプのものだった。