書影『しっぽ学』(光文社新書)『しっぽ学』(光文社新書)
東島沙弥佳 著

 骨標本を作るとき、綺麗な標本にしようと思うならば、我々が戦うべきは骨の内部に存在する脂だ。脂抜きがうまくできないと、骨はのちのち黄色くなったり、ベタついたりしてしまう。

 だから、骨標本作製の際には煮込んだり、化学薬品を使ったりするのだが、すでに旨味が溶け出るほど煮込まれているのなら、適度に脂抜きができている可能性が高い。しかも、お肉がほろっと取れる場合は長時間煮込まれているので、頑丈な腱や筋肉も骨からするりと剥がし取ることができる。

 美味しく、しかも綺麗に骨が取れるなんて、最高ではないか。それに、幸運なら無傷の尾椎が手に入ることもある。図2-3は、これまでに私が食べた中で最高だったウシのしっぽの骨だ。近位尾椎と思われる骨は残念ながら切断されてしまっているが、遠位尾椎は完形だ。これだから私はテールスープを避けては通れない。

図2-3:テールスープから見つけたウシの尾椎本書より

 ちなみに、ワイン煮込みのテールからもいい骨が取れたことがあったが、ワイン色を取るのに少々手間がかかったことを追記しておく。