このように投票率が低い低いと言われた今回の衆院選も、「今回だからこそ」と久しぶりに投票に赴いた人が筆者の知り合いにもいた。「選挙が久しぶりすぎて勝手がわからなくて不安だ」とやり方を聞いてきたので、やり方も何も説明するほど複雑でもないのだが、一応「会場でもらった投票用紙に名前や政党名を書く欄があるから、そこに名前を書くべし」と教えると、「自分の名前を書くのか」と返ってきた。
そうした人たちにもきちんと与えられているのが選挙権であり、清き一票である。なお、この人は経済に関しては馬鹿に詳しく、株価の下落を警戒して投票に赴いたようである。
余談だが、自公連立が過半数割れすると株価は大幅に下落するというのが市場関係者の大方の見立てだったが、実際の下落は限定的ですぐに反転した。専門家によれば、「選挙前の段階で自公連立過半数割れの可能性はすでに市場に織り込み済みだったのではないか」とのことである。
“選挙離れ”する若者の本音
世代間に横たわる大きな差
ここ10年ほど、全体では50%台の投票率だが、世代別に内訳を見てみると、かなり大きな差があることがわかる。今回の世代別投票率はまだ出ていないため、前回2021年の世代別投票率を見ると、10歳代~60歳代、70歳代以上で最も投票率が高いのは60歳代の71.38%、もっとも低いのは20歳代の36.50%で、倍近い開きがある。なお投票率が低い世代は順に、20歳代・10歳代・30歳代となっている。
これがさかんに言われている“若者の選挙離れ”の実態である。1票を稼ぎたい政治家にしてみれば投票率が低い若者の優先順位は低くてよろしく、その結果若者が後回しの政策が次々打ち出され、若者はさらに自分の政治不在を感じて政治への関心をなくし投票に行かなくなり、若者の政治不在がどんどん強化されていく負の連鎖となる。
若者に対して厳しい見方をすれば、「若者が選挙に行かなければ自滅していくだけ」と言えなくもないのだが、将来的に国を作っていくのはどうあがいても若者であり、若者のエネルギーこそ国の豊かさに直結するので、むやみに若者を切り捨てることは自分(年長者の老後)を蝕む行為にもなる。手取り足取りまでする必要はないが、若者が選挙に参加しやすくなる仕組みづくりは国民みんなのためになるので、年長者が率先して行っていければ美しい。