選挙における投票率の低下が叫ばれて久しい。今の社会に特に不満はないから行く人が少ないのだ、と考えればそれはそれで良いのかもしれないが、政治への無関心が腐敗に直結しかねないのだから、怖いものがある。「1票じゃ何も変わらない」とはならず、何らかの手応えを感じられる選挙とはどういうものなのだろうか。(フリーライター 武藤弘樹)
戦後3番目に低かった投票率
「今回だから」投票に行った人たち
10月27日に行われた衆院選は、15年ぶりに与党が過半数割れとなった。
近年投票率の低さがよく言われていて、今回は53.85%(小選挙区分)で投票率は戦後3番目の低さとなる(衆院選)。9月末に行われた自民党総裁選では誰が選出されるか世間的に関心が高まっていて、石破氏、高市氏の一騎打ち決選投票となったときなどはネットも相当盛り上がって、日本代表の試合のごときライブ感で見守られていた。その延長線上にある10月の衆院選はもっと投票率が高くなるかと推測していたが、そうはならなかったようである。
なお、戦後最も低かったのは3回前(2014年)の52.66%で、2番目に低かったのが2回前(2017年)の53.68%だった。前回(2021年)は55.93%だったので、今回はそこからやや上がった格好だ。だが、1993年以前は70%付近をずっと維持してきて、その後の1996~2003年および2012年は60%前後で推移(2005年、2009年は再び約70%まで回復)していたから、それらの期間に比べると2014年から数えられる直近4回の5割前後は、だいぶ低い水準にあるということがわかる。
今回投票率が低かった原因については、自民党の裏金問題で国民の政治不信が煽られていたことが大きく関係していると言われる。それでも投票率ワースト1位とならなかったのは、「政治不信」や「近年の投票率低水準のトレンド」などの“投票率を下げる要素”と、「自民総裁選の盛り上がりの余波」「物価高が呼び覚ました国民の政治的関心」などの“投票率を上げる要素”が相まみえて、それらを織り込んだものが「戦後3番目に低い」結果となって現れたようである。