「仕事が遅い部下がいてイライラする」「不本意な異動を命じられた」「かつての部下が上司になってしまった」――経営者、管理職、チームリーダー、アルバイトのバイトリーダーまで、組織を動かす立場の人間は、悩みが尽きない……。そんなときこそ頭がいい人は、「歴史」に解決策を求める。【人】【モノ】【お金】【情報】【目標】【健康】とテーマ別で、歴史上の人物の言葉をベースに、わかりやすく現代ビジネスの諸問題を解決する話題の書『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗、島津斉彬など、歴史上の人物26人の「成功と失敗の本質」を説く。「基本ストイックだが、酒だけはやめられなかった……」(上杉謙信)といったリアルな人間性にも迫りつつ、マネジメントに絶対活きる「歴史の教訓」を学ぶ。
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

【会社経営】「不測の事態」に備えて現預金はどれくらい必要か? 大企業・中堅企業・小さな会社の目安とはPhoto: Adobe Stock

利益をどのように活用する?

私は仕事柄、経営者や部門長と話をする機会が多いのですが、「会社や事業が生み出した利益をどのように活用したいか」という点について、明確な意思のない人が少なからずいます(もちろん、明確なリーダーもいます)。

利益が活用されないと、内部留保として会社に現預金が積み上がっていくことになります。

財務省が2023年に発表した法人企業統計によると、2022年度の大企業(資本金10億円以上、金融・保険業含む)の内部留保は511.4兆円と、年度調査として過去最高を更新するなど、日本企業の内部留保の貯め込みすぎが問題視される向きもあります。

長州藩の「撫育方」とは?

しかし、内部留保は、コロナ禍のように想定外の事態に陥ったときの備えになりますし、社員の待遇改善の原資にもなりますから、それ自体が悪いわけではありません。

ただし、現預金を会社に貯めているだけだと、将来的な成長に向けた先行投資や社員の給料アップなどに、有効に活用されていないともいえます。

江戸時代中期から後期にかけての長州藩主・毛利重就も、検地による増収を貯め込むだけで、「撫育方(ぶいくかた)」という特別会計による組織を立ち上げ、藩内で生産された年貢米以外の生産物(米・紙・砂糖・塩・蠟など)を管理し、江戸に運んで販売することによって、藩に莫大な利益をもたらさなかったら、その後の長州藩の成長はなかったはずです。

不測の事態に備えておく

では、現代において会社や部門が生み出した利益は、どのように活用したらいいのかを整理してみましょう。

第一に、将来の不測の事態に備えて利益を活用することです。

近年は数年に一度は予想だにしないことが起きます。リーマンショック(2008年)、東日本大震災(2011年)、コロナ禍(2020年)……予想外の事態は、コツコツと積み上げてきた努力や工夫を短期間で吹き飛ばし、またたく間に業績を悪化させかねません。

利益を貯めておくことが第一

このような逆境のもと会社を存続させるためには、ある程度は現預金を準備しておく必要があります。そのためには、利益を貯めておくことが第一です。

銀行からの借り入れでも現預金を準備できますが、借入金は利子とともに返済しないといけませんから、将来の資金繰りが悪化しかねません。

実際、コロナ禍で過度に借り入れした会社には、返済に苦しんでいるケースもあります。

現預金はどれくらい必要か?

あくまで第一は、自ら稼いだ利益を貯めることで、第二は銀行からの借り入れです。

この現預金がどれくらい必要か。大企業であれば月商の1か月分、中堅企業であれば1.2~1.5か月分、小さな企業であれば1.7か月分くらいが目安とされています。

ただし、コロナ禍のように大規模な混乱に巻き込まれたら、それは緊急事態ですから、銀行からの借入金も活用して、さらに現金を積み増し、苦境を乗り越えなければならないこともあるでしょう。

予想外の事態への備え

江戸時代も天候不順などで急に米がとれなくなるなどの飢饉や災害に備えて、民衆に米や粟(麦・大豆・小豆を含む場合もある)を提供するための「義倉」「社倉」がありました。

このように予想外の事態への備えは、昔から必要とされてきたのです。

※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。