カナダの流通大手がセブン&アイグループに買収を提案している件に関して、最新報道では8兆円規模となっても推し進めてくる可能性があるそうだ。なぜ、コンビニ業界のM&Aがこれほど加熱するのか。セブン&アイが2021年に買収した米企業の経営史を専門とする筆者が、現地の最新トレンドを徹底解説する。【前後編の後編】(桃山学院大学経営学部教授 小嶌正稔)
>>前編『セブンM&Aが8兆円規模の可能性も!クシュタールが是が非でも買収したがる無理からぬ事情』から読む
セブン買収に8兆円が動く可能性も!
米コンビニM&Aが活発な三大要因とは?
カナダの流通大手、アリマンタシォン・クシュタール(ACT:Alimentation Couche-Tard)が、セブン&アイ・ホールディングスに友好的な買収提案(非拘束提案)を行った。この友好的な非拘束提案は、実はM&Aのスタートでは特段めずらしいことではない。何より、数年前にセブン&アイがスピードウェイ(マラソン石油のコンビニ部門)を買収する際もこれを行い成功している。
クシュタールも戦略的に、この手法でN&Aを繰り返し現在の地位を築いてきた。最新の一部報道によると、クシュタールは、セブン&アイの上場来高値(2244円)を約5割上回る8兆円規模となってもM&Aを推し進めてくる可能性があるそうだ。
なぜ、カナダ企業がこれほどにもセブン&アイを買収したいのか。記事の前編では、(1)セブン陣営とクシュタール陣営の世界各国の店舗数を徹底比較し、(2)米国と日本のコンビニ市場を複数のデータを基に分析した。今般のディールに関して米国内では、マクドナルドとスターバックスの合併をイメージさせる報道も出ている。とにかく、市場を正確に見ることが大切だ。
米国でコンビニ業界のM&Aが活発な要因は、デジタル化(DX)の進展、コンビニフードのクイックサーブレストラン(QSR:Quick Serve Restaurant、ファストフード)化、そして電気自動車(EV)化が関係している。詳しく解説していく。