これが意見風土(編集部注/climate of opinionの日本語訳。その場における優勢な意見)となり、X上におけるジャニーズ問題の沈黙は破られました。最初に沈黙を破ったのはジャニーズ事務所のファンではなかったのです(もっとも、2023年4月に、ジャニーズファンの一部団体が「ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」を立ち上げて署名活動を行い、約1万6000件の署名をジャニーズ事務所に提出して問題の解明と謝罪を要求しています)。

 ジャニーズファンが反応し始めるのは、ジャニーズ事務所によるオフィシャルな動画報告の後です。

 社長の動画報告から調査チームの報告までは特に、ジャニーズ事務所が危機に陥ろうとしている期間であり、この危機に際してファン1が反応を示すようになったのかもしれません(図表4-5)。ファン1のクラスタ内でシェアされた投稿を見ると、性加害に懐疑的で、ジャニーズ事務所を擁護するような投稿が見られました。

 それに対して他のグループは、ジャニーズ事務所の責任やメディアの責任など、世論化されたジャニーズ問題と同様の論調を示しています。これらのグループは、沈黙を破るとともに多数派世論を形成したのです。一方で、ジャニーズを擁護するファン1グループは、エコーチェンバーにより時間を経るとともに拡大していきます。