エコーチェンバーの弊害が指摘されて久しいが、それでも現代人はネット依存から自由になれない。最近ではエコーチェンバーを利用してカンパ集めが横行している。(フリーライター 鎌田和歌)
読売新聞、朝日新聞でも話題
ネットの仲間内で極端思考
これまでも何度か取り上げてきたネット上の「エコーチェンバー」が、また一部で話題になっている。
エコーチェンバーとは、SNSの「おすすめ」、あるいは自分が作り上げたタイムラインにより、自分の好む情報ばかりが目に入りやすくなる状態のことである。自分の目に入る範囲内の情報に強く影響され、特定の情報を信じ込んだり、特定の団体や人物への誹謗(ひぼう)中傷につながってしまうことがある。
このエコーチェンバーの主な場所がX(旧ツイッター)であることに、異論のある人はいないだろう。ツイッターがXに改称され、イーロン・マスク氏によるさまざまな変更を改悪だと評するユーザーも多いが、それでもXのユーザーが目に見えて減ることはない。そして数年来指摘され続けているエコーチェンバーによる悪影響は、むしろ増加の一途をたどっているように見える。
読売新聞は9月19日に『「エコーチェンバー」極端思考が仲間内で加速…抜け出した男性「集団はカルト宗教のよう」』という記事を掲載した。
これは連載「情報偏食」の中の一記事で、記事や連載の中では、インフルエンサーに心酔して誹謗中傷の書き込みを行ったケースや、ネット上のエコーチェンバーにより中学生のいじめが加速したケースなどが紹介されている。
また、朝日新聞が9月16日に掲載した藤田直哉氏のコラム『(藤田直哉のネット方面見聞録)「推し」活が陰謀論に傾くと、行き着く先は』の中では、エコーチェンバーという言葉こそ使われていないが、「依存」に注目してネット上の過激な言説を下記のように説明している。
依存の状態になると、現実から目を背け深刻さを認めない傾向が出ることが、研究で分かっている。非難や忠告に耳を貸さず「自分は大丈夫、自分は正しい」という態度を脳が作り出すのだ。
====
この分析を借りるのであれば、エコーチェンバーの中にいる人たちは、タイムライン依存状態となった仲間たちとともに「自分たちは大丈夫、自分たちは正しい」と思い込む状態になっているように見える。