社名の看板を撤去する準備作業が行われている、旧ジャニーズ事務所社名の看板を撤去する準備作業が行われていた旧ジャニーズ事務所=10月5日 Photo:SANKEI

事務所解散やタレントCMの排除
法とは関係なくネットの“怒り”で処罰

 インターネット上の炎上が社会問題になるようになって久しいが、ここ2、3年、「キャンセル・カルチャー」という言葉を耳にするようになった。

 企業や特定の団体、タレントら個人の不祥事や発言などを問題視して集中的な批判や不買運動、さらにはその団体の存在や個人の業績の全てを過去にさかのぼって否定しなければ収まらないところまでエスカレートする。

 法的に妥当なペナルティーや償いの範囲とは関係なく、ネット世論の“怒り”によって一度罪を犯した存在は罰として消滅させられねばならないかのように過激化するのだ。

 この動きは米国で2010年代中ごろから広がってきたが、直近のジャニーズ問題でのタレントのCM降板を巡る議論や事務所解散の動きを見ると、日本でもキャンセル・カルチャー時代の到来を感じさせる。

 SNS(交流サイト)の普及・発展は単なる情報伝達手段の変革だけでなく、コミュニケーションや社会運動の在り方までを変えつつあるが、法の支配や熟議の民主主義との関係からも、この“手軽な社会的抗議活動”の危険性は認識される必要がある。