腕を組む子ども写真はイメージです Photo:PIXTA

知的障害と平均域のボーダーである知能指数(IQ)「70以上85未満」は「境界知能」と言われ、日本人の約7人に1人が該当する。こうしたグレーゾーンの子どもたちは、「普通」に見えるのに「普通」ができないという生きづらさを抱えている。ここでは「よく嘘をついてしまう子」「自分のことを棚にあげる子」「人の気持ちがわからない子」の3例を挙げ、子どもたちへの指導法を説く。本稿は、宮口幸治『イラスト図解 境界知能&グレーゾーンの子どもの育て方』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。

CASE1「よく嘘をついてしまう子」
「わかった」ってさっき言ってたよね?

 境界知能やグレーゾーンの子どもは周囲から「よく嘘をつく」と思われてしまうことがあります。しかし、その裏には「子どもが相手の指示や言葉をしっかりと聞き取れていない」という原因が隠れていることが多々あります。

 たとえば、親は「算数ドリルと漢字の書きとりをしてね」と伝え、子どもが「うん」と答えたのに、算数ドリルしかやっていないので叱ったら、「漢字の書きとりなんて聞いてない!」などとその子から反発されたような場合です。大人の視点からは「やりたくないから嘘をついている」と見えるでしょう。

 ですが、「聞く力」が弱い子の場合は、長い文章だと一文のうち2~3語しか聞き取れない子も少なくありません。英語が不得意な人が英語で話しかけられても意味をすべて理解できないように、一度に聞き取れる言葉の量が少ないと、相手が言っていることをすべて理解することができないのです。

 相手が何を言っているのかをちゃんと理解していないのなら聞き返せばいいのですが、この子たちは恥ずかしさやプライドを傷つけられたくないという思いから、「わからない」「もう一度言ってほしい」と伝えられません。

 理解が中途半端な状態で思い込みから行動し、「嘘つき」だと周囲に誤解されるのです。

P33イラストイラスト:(C)石玉サコ 拡大画像表示