働いていると、毎日忙しい。仕事はもちろん、生きていく上では家事もしなければならないし、人によっては育児や介護もあるだろう。「しなければならない」に追われていると、次第に自分が本当にしたかったこともわからなくなってくる。そんな状態に陥っている人も少なくないのではないだろうか。「2ちゃんねる」の開設者で実業家のひろゆき氏は「優先順位を決めることが、毎日を幸せに生きるコツ」と語る。その理由について、著書である『1%の努力』の内容をもとに解説する。 (文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)
“人生の壺”に最初に入れるべき「大きな岩」とは
本書でひろゆき氏は「大学生に伝えたいこと」として、ネット上でも有名な「この壺は満杯か?」という話を挙げている。概要はこうだ。
ある大学教授が、授業中に大きな壺を取り出して教壇に置いた。その壺の中に、岩を満杯になるまで詰めた。そして、学生に「この壺は満杯か?」と問うた。学生たちの多くは「はい」と答えたが、教授は「本当に?」と言いながら、今度はバケツいっぱいの砂利を取り出し、壺に流し込んだ。そしてまた、「この壺は満杯か?」と問う。学生の一人が「たぶん違うだろう」と答える。すると、教授は次に砂の入ったバケツを取り出し、岩と砂利の隙間に流し込んだ。そして再び「この壺は満杯か?」と問い、学生たちは声を揃えて「いや」と答えた。教授は、今度は水差しを取り出し、水をなみなみと注いだ。
この一連の行動を通して教授が言いたいことはなんだろうか。
それは、「最大限の努力をすれば、予定を詰め込むことができる」ということではなく、「大きな岩を先に入れない限り、それが入る余地はその後二度とないということ」だ。
「自分の人生にとっての『大きな岩』は何か。それを考えて、最初に壺に入れなさい。自分にとって重要性の低いものから満たしてしまうと、人生は重要ではないものに満たされてしまう」と教授は生徒たちに教えたのだ。
自分にとっての「大きな岩」を言語化する
ひろゆき氏はこの話を受けて、「自分にとっての『大きな岩』は何かを問いかけ、できれば言語化して人に伝えるのがいい」と勧める。それは次のような形で、だ。
「年に1回は『海外旅行』に行きたいので、前もって休みを宣言します」
「『子どもとの時間』が大事なので、17時ちょうどには必ず退社します」
こういうことは、堂々と表明しておいたほうがいい。もし何かを言われても、言い返せるように理論武装しておいてもいいかもしれない。(P.73-74)
なお、ひろゆき氏にとっての大きな岩は「睡眠」なのだそうだ。
潔いと言いたくなるほどの徹底ぶりだ。彼と同じように主張できるほど「優先したいもの」を私たちは自分で理解しているだろうか?
判断基準は「修復可能かどうか」
「これが自分の人生において最優先すべきことである」と決められる人はいい。
実際は、あれもこれもと考えて、決められない人の方が多いのではないだろうか。
そんな人に向けて、ひろゆき氏は次のような「考え方の考え方」をアドバイスしてくれている。
という判断軸だ。
もし修復が可能だったら、後回しにしてもいいというルールである。(P.81)
例えば、ひろゆき氏の場合、寝不足で頭の冴えない状態は、他の方法では修復できないから、睡眠を大事にしているという。
しかし、ひろゆき氏は喫煙しているそうだが、「肺が真っ黒になってしまうから」という理由ではタバコはやめないのだそうだ。
なぜなら、喫煙で黒くなった肺は「禁煙して10年くらい経つとキレイになる」からだ。肺も細胞でできているので、10年もすれば入れ替わるのだという。
つまり、「肺は修復可能である」という認識から、タバコはやめない、という主張だ。
確かに、後悔は取り戻しようがないものであればあるほど、深くなる。
逆にいうと、修復されること、後からでもやれることであれば、後回しにしてもどうにかなる。
これは、優先順位をつける際の一つの判断基準となるだろう。
後から手に入るものは「ムダ」に入れておく
何がムダで何を重要とするか、なかなか定義は難しい。
ひろゆき氏は、判断基準として、次のようなアドバイスをくれている。
ただ、後から手に入ったり修復が可能なものは、とりあえずムダのほうに入れておけばいいだろう。(P.82-83)
優先順位をつけることは、「大事なこと」で、かつ「今を逃すとできないこと」を選び抜いていくことなのだ。
「やりたいことリスト」を作っている人もいるだろうが、ひろゆき氏の判断基準をもとにその叶えていく順番を入れ替えてみるといいかもしれない。
時間軸を考慮して「やりたいこと」に取り組むのは、後になって「あれもやりたかったのに」とならないためにも大事なことだ。
1度きりの人生。後悔しないためにも、ひろゆき氏のアドバイスに耳を傾けてみてはいかがだろうか。