共創できない組織体質に
このような「聞かない」コミュニケーションを続けていると、組織そのものが共創できない独り善がりな体質になっていく。
共創とは相手と対等な立場で、相互理解をしながら課題解決や価値創造を行うことである。自分たちの事情を一方的に押し付けるのは共創ではない。また聞いたつもりになって、自分たちが正しい前提で良かれと思った行動を一方的にとるのも共創ではない。
②自分たちの立場や事情を示し
③双方が意見や提案を述べ合い
④お互いの期待役割を理解し
⑤合意形成する(合意できない場合は、別々の道を歩む判断をする)
このプロセスを経てはじめて、共創が成り立つのである。
これからの時代、あらゆる組織において共創が求められる。VUCAと呼ばれる時代において、自分たちだけで答えを出せる領域は限られつつある。過去の成功パターンは通用しない。意思決定層やベテランが答えを出せるとは限らない。少子高齢化による労働力不足が社会問題になり、同じ組織や地域の中に答えを出せる人を確保し続けられる保証もない。
こうした時代において、「他者とフラットにつながり、他者の能力や意欲を借りつつ自分たちなりの答えを出していく」「下請け関係ではなく、共創関係でものごとを解決する」。その姿勢がいよいよ求められる。
共創できない組織は、経営リスクを背負うと言っても過言ではない。
そもそも対話ができているか?
共創ができるようになるためには、個々の対話能力および組織としての対話の習慣が欠かせない。「聞かない」とは、「対話ができていない」状態の裏返しでもある。
「対話ですか? 毎日メンバーと1on1ミーティングしていますよ。十分にできています」
こう自信たっぷりに話す人もいるが、はたしてそうだろうか? 1on1ミーティングという名のものに、相手に自分の都合を押し付けるだけ、その場で聞きかじった情報をもとに一方的に走りまわり、チームの雰囲気を悪くするだけの勘違いマネージャーも世の中にはたくさんいる。
まずは自分たちの組織やチームは「本当に対話できているか」と、問うことから始めよう。あなたの組織では対話ができているか、対話をする習慣があるか疑ってみてほしい。
・自分たちの組織やチームは「対話ができているか?」と問う
(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。