社員食堂の前で配布したバナナ2019年6月、DXoT推進部の前身となったチームが、社員食堂でスマートグラス体験会を実施。興味を持って立ち寄ってもらうため、社員食堂の前でバナナを配布した Photo by Mayumi Sakai

グローバルで大規模プラント建設を手掛ける東洋エンジニアリング。2017年のDX開始当初は社員の関心が薄く、説明会を開いたり、部署を回って改善を促したりと草の根的な活動が続いた。しかしこの活動は無駄ではなく、「DX=生き残り戦略」として経営陣に浸透。2019年にはDXを最優先経営課題として「DXoT(Digital Transformation of TOYO)推進部」を立ち上げ、ユニークな取り組みで成果を上げている。原動力となったのは、庶務や秘書として業務を支える一般職社員を中心とした「デジタルファーストチーム」だった。(ノンフィクションライター 酒井真弓)

とにかく関心を持ってほしかった

 ここに、「DXoT」のシールが貼られたバナナがある(写真)。2019年、DXoT推進部の前身チームが認知度を高めるために、社員食堂の前で配ったものを再現したものだ。

東洋エンジニアリング デジタルファーストチームの原田美香さん、宮澤忠士さん、浅野有夏里さん、嶋田雪乃さん左から、東洋エンジニアリング デジタルファーストチームの原田美香さん、宮澤忠士さん、浅野有夏里さん、嶋田雪乃さん Photo by M.S.

「とにかくDXに関心を持ってほしかった」。DXoT推進部の宮澤忠士さんは、そう振り返る。この頃、DXに対する社内の反応は極めて薄く、意見やアイデアを募っても暖簾に腕押し。説明会を開いても、興味を持って聞いてくれる社員は少なかったという。