味の素 R&B企画部 CXサービス開発グループ マネージャー 勝美由香さん、Laboro.AI エンジニアリング部 エンジニアリングマネージャー 村田裕章さん、同ソリューションデザイン部 シニアソリューションデザイナ 広瀬圭太郎さん左から、味の素 R&B企画部 CXサービス開発グループ マネージャー 勝美由香さん、Laboro.AI エンジニアリング部 エンジニアリングマネージャー 村田裕章さん、同ソリューションデザイン部 シニアソリューションデザイナ 広瀬圭太郎さん Photo by Mayumi Sakai

日々の食事を作る人にとって、大きな悩みの種が「献立を考える」。味の素が開発したサービス「未来献立」は、栄養士の知識やノウハウを教え込んだAIが、人間の代わりに無料で献立を考えてくれるというサービスだ。外食や食べ過ぎた日の翌日に“つじつまを合わせる”献立なども提案してくれる。味の素には膨大なレシピデータベースがあり、栄養士もたくさんいる。簡単にサービス提供できるかと思いきや、実際の開発は泥臭い作業の連続で、AIに「おいしいとは何か」を教え込ませる工夫と苦労が詰まっていた。(ノンフィクションライター 酒井真弓)

献立づくりのストレスを軽減する「未来献立」

 味の素が開発した「未来献立」は、AIを駆使して最適な献立を提案するサービスだ。栄養バランスはもちろん、食事の楽しさや季節感、調理の時短など、ユーザーの要望に合わせた「ゴールデン献立」を最大8日分作成する。栄養バランスの偏りを翌日の献立で調整する「ツジツマあわせ機能」も備える。

未来献立気に入った献立はお気に入りとして保存できる。また、好みのアレンジや食事の様子を記入するメモ機能もあり、ユーザー自身がサービスをカスタマイズできるという(プレスリリースより引用) 拡大画像表示

 味の素 R&B企画部 マネージャーの勝美由香さんは、「当社の管理栄養士のノウハウをAI化し、より多くの人々に届けたい」と語る。これまでアスリートなど限られた層にのみ提供してきた高度な栄養管理を、AIを通じて一般家庭にも広げる狙いだ。

「栄養学的な正しさだけでなく、食事を通じたコミュニケーションの楽しさ、彩りや香りによる食欲増進など、定性的な価値も最大化しています。これらをデジタル化することで、当社ならではのサービスを目指しました」(勝美さん)

 構想段階から伴走するのは、企業ごとのニーズに合わせてオーダーメイドのAIソリューションを開発するLaboro.AI。味の素の1万種超のレシピデータベースを活用し、「献立作成エンジン」を共同開発した。

 一見、管理栄養士の思いとテクノロジーを融合した、ほっこり系AIに思えるこのサービス。開発の裏側は、想像以上にアツかった。