東京大学や大阪大学などは
節電のために図書館の開館時間を短縮

 一方で多くの国立大学では、トイレに限らず老朽化した建物や設備が目立つ。やはり、運営費交付金が減額された影響が大きい。経済的な事情で進学を断念する若者を増やした

 くないと、大半の国立大学が05年度から授業料を据え置いていることも、厳しい財務状況の一因となっている。

 国の科学研究費補助金(科研費)などの競争的資金や企業との共同研究、寄付といった外部資金の獲得を進めている大学も、状況はあまり変わらない。「この研究に」「あの設備に」などと使途が限定されていることが多く、教育関連の施設・設備の改修に自由に使うことができないという。

 悪影響は、学生の学びに欠かせない図書館にも及んでいる。22年以降、電気代の高騰などを理由に、東京大学や大阪大学、九州大学、北海道大学などで、開館時間を短縮する動きがみられた。開館時間を1~3時間程度短縮したり、それまでは開けていた休日や祝日を休館にしたりしたのだ。エアコンに使う電気代を節約するために、図書館を含めたキャンパスの夏の一斉休業期間を延ばした大学もある。

 泣く泣く図書館費を減らす大学も増えている。海外大手出版社の寡か占せん化による学術誌や電子ジャーナルの高騰も拍車をかけ、購入する書籍を大幅に絞り込む大学も多い。

 東海地方にある大学の教授は、国立大学の図書館の予算不足を実感している。書庫のスペースを広げることができないなか、新しい書籍を入れるために、古い蔵書を廃棄することが増えているという。

「廃棄される本の中には、もう市場では手に入らない貴重なものもある」。教授はそう嘆き、ある大学の図書館が廃棄しようとしていた蔵書を100冊近く引き取ったこともある、と打ち明ける。

 予算が足りないことが、教育の高度化を妨げ、さらには劣化につながる。朝日新聞のアンケートには、そんな懸念を訴える声が数多く寄せられた。