18年度には、年俸制の教員が全体の4分の1を超える1万6000人超となっている。ただ、年俸制が広がっているのは若手教員に偏っている。文科省の調べでは19年度、20 代の教員の年俸制比率は約6割。30代でも4割以上だ。一方で、50 代は約1割にとどまる。

 本来は、研究者の流動性を高めて、特に若手にポストの門戸を広げる狙いがあった。だが、無期雇用のベテラン教員を年俸制に転換させるには、膨大な手間がかかる。このためベテランはそのままにして、新たに雇用する若手を年俸制で雇っている大学が多いことがうかがえる数字だ。

 若手への偏りは、任期付きのポストでも見られる。 国大協の調査では、23年度の40歳未満の国立大学の教員の任期付き割合は59.3%だった。(図表3-1)

 文科省の学校教員統計調査でも、22年度の国立大の常勤の教員のうち、40歳未満が占める割合は22%。92年の37%から15ポイントも下がっている。

書影『限界の国立大学――法人化20年、何が最高学府を劣化させるのか?』(朝日新書)『限界の国立大学――法人化20年、何が最高学府を劣化させるのか?』(朝日新書)
朝日新聞「国立大の悲鳴」取材班 著

 また、国公私立合わせたデータではあるが22年に公表された文部科学省の科学技術・学術政策研究所の博士人材追跡調査の第4次報告書によると、大学や公的研究機関に就職した人のうち、「任期あり」の職だったのは約6割に達していた。

 90年代、国は「大学院重点化政策」を行い、大学院の数を増やし、修士号や博士号取得者を増やしてきた。00年には大学院生は90年代初頭に比べて2倍以上にもなった。

 しかし、大学などでのポストの増加や民間企業での活用はあまり進まず、非常勤や有期のポストで働かざるを得ない人も続出した。その後、04年に国立大学が法人化して以降は、前述の通りだ。

 そういった不安定な雇用状況もあり、博士課程へ進学する人は減っていった。03年度の1万8232人をピークに減少傾向が続いている。