エントリーシートや履歴書で“合格点”を取るために必要な問題を読む力とはPhoto:PIXTA

エントリーシートや履歴書、そして小論文などの「実用文」の試験では、必ず文章を書く力が求められる。人生の重要な場面で「文章力がない」という理由からチャンスを逃してしまうのはもったいない。元NHKアナウンサーで、独立後に「ウェブ小論文塾」を立ち上げた今道琢也氏によると、実用文で合格点を取るヒントは“問題文”に隠されているという。※本稿は、今道琢也氏『人生で大損しない文章術』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

受験や就職で必須となる「実用文」
問題を読めていないケースも

 小論文やエントリーシート、履歴書、各種申請書などの、「実用文」を書くときに最も気をつけなければいけないことは何でしょうか。こう聞くと、「主語を明確にすることだ」「結論をはっきりさせることだ」といった答えが返ってきます。それも必要なことですが、もっと大事なことがあります。まず、次の文例を見てください。

 業務におけるコミュニケーションの重要性について述べてください。
解答 私は日々の業務において、積極的にコミュニケーションをとるように心がけている。例えば、仕事で発生したトラブルについてはすぐに上司に伝えるとともに、現場のメンバーとも情報を共有している。また、日ごろから職場のスタッフに対して、何かあったらいつでも相談するように伝えているし、相談がなくとも気になるスタッフがいたらこちらから声をかけるようにしている。このように、私は常にコミュニケーションをとりながら、業務を進めていくことを心がけている。

 昇進試験で出てきそうな問いかけですが、この文章を読んでどのような印象を持ったでしょうか?「私は」と主語は明確にできていますし、「私は常にコミュニケーションをとりながら、業務を進めていくことを心がけている」と、結論もはっきりしています。日本語表現としても的確で、自然な文章です。

 しかし、私の目から見ると決定的におかしいところがあります。それは、「問題文をきちんと読んでいない」ということです。

解答のポイントは
何を聞かれているか

 このことについて掘り下げて考えてみましょう。問では、何を聞いているのでしょうか。「業務におけるコミュニケーションの重要性について述べてください」とあります。この意味をよく考えてみましょう。

「業務におけるコミュニケーション」については、分かります。例えば、仕事をする上で、報告を密にしたり、問題が起きたら相談したりすることです。それが、「業務におけるコミュニケーション」です。