この文章は、自己PRを想定して書かれたものです。全く駄目な答案ではないのですが、やはり具体性が弱く、高評価は与えられません。

 では、どこを具体化する必要があるかというと、この文章で最も伝えなければいけない部分です。「自己PR」として、「意志の強さ」をこの文章で伝えたいのですから、「意志の強い」人物像が相手の頭の中に浮かぶようにします。例えば次のような書き方です。

 自己PR欄 私は、一度始めたことは最後までやり抜く意志の強さがあります。例えば小学生の頃から始めた剣道は、練習もつらく、なかなか上達しない時期もあって何度もくじけそうになりました。しかし、ここで辞めたら自分に負けたことになると考え、毎日1~2時間の練習を欠かさず続けてきました。寒い冬の日であっても、決して弱音を吐きませんでした。剣道に限らず、高校での勉強やアルバイト先で任された仕事など、何事にも手を抜かずやり遂げています。

「具体性」があるかどうかは
説得力、納得感に直接関わる

 初めの答案と比べてみてください。

 ・良い指導者や仲間に恵まれて、長く続けることができています

 ・このように頑張れたことは、私の自信にもなっています

 こうした一般論を書くよりも、「粘り強い性格」であることを示すようなシーンを具体的に描写した方が、遥かに説得力のある答案になります。

『人生で大損しない文章術』書影『人生で大損しない文章術』(今道琢也、新潮社)

 後の文例では、

 ・毎日1~2時間の練習を欠かさず

 ・寒い冬の日であっても

 などのような「具体的」な描写によって、冬の日に黙々と練習を続ける人物像が頭の中にサッと浮かびます。その人物像を通して「確かに意志の強そうな人だな」という納得感が得られます。

 このように、「具体性」があるかどうかは、文章の説得力、納得感に直接関わります。結果として、答案の印象、評価を大きく左右するのです。

 この「具体的に書く」ということも多くの人が苦手としており、私の見るところ、半分以上の人ができていません。しかも、「この部分はもっと具体的に書いてください」と指摘しても簡単には直りません。複数回指摘しても、なかなか改善しないのです。文章に具体性をもたせる、ということは難しいことのようです。