文章を書く上で重要なのが「具体的に書くこと」。文章に具体的な事象や情景を入れるだけで、説得力がグッと増すという。小論文指導の専門塾「ウェブ小論文塾」で代表を務める今道琢也氏が、2つの自己PR文を比較しながら具体的な文章を書く方法を伝授する。※本稿は、今道琢也氏『人生で大損しない文章術』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
回答を具体的にするだけで
他の人と差をつけられる
大学入試にしても、公務員・教員試験にしても、昇進試験にしても、「取り組み」を書かせる問題が頻出します。例えば、「行政として、循環型社会実現のためにどう取り組むべきか述べよ」「教員として、子ども達の社会性を育むためにどのように取り組むべきか答えよ」「管理職として、人材育成にどう取り組んでいくか述べよ」といった出題です。あるいはエントリーシートでは、「あなたが学生時代に力を入れて取り組んだことを述べよ」といった質問がよくあります。
このような場合に、「取り組み」を具体的に書けている答案は少ないのです。大抵の場合は、「市民と行政との連携を一層進め、環境立国にふさわしい循環型社会を実現すべきだ」「教員として社会の中で生きることの意味を考えさせながら、子ども達1人1人によりそった指導を行っていきたい」などのように、具体的に何をするのか全くイメージが浮かばない答案を書いてしまいます。
仮に「市民と行政との連携を一層進め」と書くのならば、どうすれば連携が進むのか、具体的な方策を示す必要があります。「教員として社会の中で生きることの意味を考えさせながら、子ども達1人1人によりそった指導を行っていきたい」というならば、どうしたらそれが実現できるのか、その具体的な方法を示さなければいけません。
そういうことを示さずに、ただ、「市民と行政との連携を一層進め、環境立国にふさわしい循環型社会を実現すべきだ」といったきれいな言葉だけでまとめたら、良い評価にはなりません。逆にいうと、それができていれば、他の人に大きな差をつけられます。
「具体性」がない文章は
気持ちが読み手に伝わらない
「具体性」について、もっと身近なところで使われる文章についても、考えてみましょう。例えば、お歳暮に羊羹をいただいて、そのお礼の手紙を書く場合で考えてみます。
この文例では、確かに、「心からお礼申し上げます」「過分なまでのお心遣いをいただき」「感謝の気持ちで一杯」などの謝意を表す言葉は書いてあるのですが、今ひとつ読み手に伝わってきません。