父親とともにスイスの安楽死専門家の下へ
筆者がSNSのタイムラインに流れてきた彼女の動画を初めて見たのは、10月25日だった。沙白さんは10月24日、スイスの安楽死専門家のもとで、スケジュール通り施術を受けた後だった。
彼女は施術の1週間前に彼女の決定を支持した父親と一緒にスイス入りして、スイスでの日々を楽しんだ。母親は……彼女が病気に悩まされて実家に戻って暮らすようになったときに、「あんたが病気になったおかげで私たちは迷惑している」と言われて以来、ずっと没交渉になっていた。
スイスでの最期の日々、父親が「ありがとう、かわいい娘よ。お前のおかげでこんな美しい風景を味わうことができたよ」という声が動画に記録されている。
そして、現地時間の10月23日、最後の動画でいつも通りきれいに身だしなみを整えた沙白さんは、「一番仲良しの友人がくれたペンダントと、父が買ってくれたひざ掛けと一緒に行きます」と言うと、手を振って動画を終えた。
残されたのは、彼女への直接的な批判、安楽死の是非、病気で苦しむ人たちへの支援、そしてSLEという病気についての医師の見解などが混ざった大議論だった。だが、「彼女は彼女自身で、彼女らしい道を選んだ。それを第三者がとやかく言う必要はないだろう」という声は、どこまでそんな人びとに届いているのだろうかと心もとない。