全身性エリテマトーデスという難病を発症~沙白さん

 もう一つ、ある女性の生き方も話題になった。

 上海女性の鄭豊さんがネットに上げた動画が10月末に突然大きな注目を浴びてニュースになった。鄭さんはネット上では「沙白」と名乗っているので、ここでも沙白さんと呼ぶ。

 上海で生まれ育った沙白さんはシンガポールの大学に留学し、帰国してホワイトカラーとしてのかなりいい職についていたらしい。だが、沙白さんは20年ほど前、20代初めに全身性エリテマトーデス(SLE)という免疫システム異常を発症、これまでさまざまな具体的疾患に悩まされてきた。

 数年前には職場を辞め、スタートアップ企業の設立に携わった後、フリーランスの英語教師を務めてきた。今年に入ってから体調が悪化し、腎不全と診断されて週に3回、透析に通う生活を送っていると話した。

 発症した当時、上海でもトップの病院に入院して検査を受けたが原因が分からず、それでも数カ月間、「治療」を受けていた。しかし、「原因も分からないのに、いつまでもベッドにつながれるのは嫌」と病院側を説得し、念書まで書いて退院。その後自宅に戻った彼女が外出しようとするたびに両親が止めるのを不思議に思い、問いただしたところ、SLEを発症していることが分かった。

 先にも書いた通り、SLEは免疫システム異常によってさまざまな疾患を引き起こす病気で、日本でも難病に指定されている。発熱や倦怠感などの他に、太陽の光を浴びることで体中に激しい発疹ができることもある。沙白さんも動画で、「激務で疲れが取れないだけだと思っていたら、旅行や遊びに出かけても同じような倦怠感に悩まされた。それはすべてSLEのせいだった」と述べており、何をしても倦怠感に悩まされて過ごすくらいなら、楽しく日々を過ごしたいと職場を辞める決意をしたという。

 その後の彼女のSNSには「医者の言いつけには従わず」(本人弁)、おしゃれをして海外の街やナイトライフを楽しむ姿がアップされている。「楽しむことを最優先に」をモットーにしてきたが、ここ数年、服用していた薬の副作用もあり、前述したように腎臓機能の低下を招いてしまった。

 そして彼女は決心した。このまま、ベッドに横たわってただ食べて排泄するだけの生活を送るのは嫌だ、安楽死を選ぼう、と。

 彼女がネットにアップした動画はすべて、そのための手配を済ませたあとの日々のカウントダウンだった。