ふるまいよしこ「マスコミでは読めない中国事情」「黒神話:悟空」公式サイトより

日本人にもおなじみ、西遊記の孫悟空をモチーフにしたゲーム「黒神話:悟空」が中国で大ヒット。ゲームの舞台になった街に観光客が殺到してあふれかえる事態となっているという。このゲーム、グラフィックが美しく、ハイレベルな作品なので、中国だけでなく世界中で大ヒット……という触れ込みなのだが、調べてみるとどうもいろいろ不自然なところがあるのだ。(フリーランスライター ふるまいよしこ)

秋の行楽シーズン、山東省で観光客が公共トイレで夜を越す事態に

 中国では10月初め、建国記念日にあたる国慶節で7連休となった。経済不振であまりかんばしい話題は流れてこなかったが、中国内陸部にある山西省には観光客が殺到、宿がなかった人々が、公共トイレにすし詰めで夜を明かしたという。

 筆者にとって中国の公共トイレというのは、正直、本来の目的で使用するにも勇気がいる衛生状態であり、そこで夜を明かすとはあまりにもハードルが高い。ただ、この時期の山西省は夜にはかなり肌寒くなるはずで、観光客にとっては屋根と壁があるだけマシだったのかもしれない。

 秋の行楽シーズンといわれる国慶節連休に、宿泊先も手配せずに現地に赴く中国人観光客の「勇敢さ」にエールを送るべきか。とにかく、あまり思い出したくない公共トイレの床という床に隙間なくびっしりとうずくまって夜を越す観光客の写真に、さまざまな思いが脳裏を横切った。

 そもそも、観光インフラがそれほど発達していない山西省に、なぜ大勢の観光客が押し寄せたのか。きっかけとなったのは、8月下旬に発売され、大きな話題を巻き起こしたゲーム「黒神話:悟空」(以下、「黒悟空」)だった。